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001 「なぜ」「どうして」の対象がフィルムだった映画少年。 [はじめに]

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●すべては光と影を記録する"時間の帯"を手に入れた時に始まる。


001 序に代えて


「なぜ」「どうして」の対象がフィルムだった映画少年。


 昔…。そう。はっきり言えば1947年。戦争直後と呼ばれている時代です。私が小学校に上がったばかりの頃、良い映画とされる作品は文部省推薦というお墨付きを受け、学校ぐるみで観覧に行ったものでした。

私が初めて見たカラー映画は、ディズニーの「ダンボ」でした。それは小学校の体育館に暗幕を張って上映されたのですから、映画館からの出張上映という形だったと思います。
 
それまで白黒映画しか知らなかった私にとって、それは文字通り目を見張るほど鮮明だったばかりでなく、色彩の鮮やかさは気が動転するほどのショックでした。

大人になってから考えると、それまで見せられていた映画は、白黒16ミリ映画。対する「ダンボ」は格段の鮮やかさを誇るイートマンカラーで、映写機も35ミリフィルムを使った本格的な上映会だったのです。今でいえば、16ミリの1駒をハイビジョン画質とすれは、その4倍以上の4K画質に例えられます。

映画観覧から帰ると、興奮している私を茶化すように、一周りも歳の違う長兄が言った言葉が、以後ずっと私の頭の中に残ることになります。
「映画はね、写真の影なんだよ。みんなフィルムの影を見て、喜んだり悲しんだりしているんだよ。面白いね」

最初はよく分かりませんでした。けれども大きくなるにつれて、その意味が少しずつ分かってきました。フィルムに連続的に定着されている画像は、光と影で構成されるもので、それが「動く写真」の正体なのだ。
 
動く写真は時間の経過を伴う。では、動く写真を記録したフィルムとは、目に見えないはずの「時間」を見ることができる「時間の帯」ではないか…。
 更にその時間の帯は、カットが変わるだけで昼から夜へ、日本から外国へ、海底から宇宙へと自在に飛躍する。まるで瞬間移動の魔法のように…。「タイムマシン」とは映画のことではないか。なぜ人はこのようなものを考え出したのだろう。

このような関心から始まった私の映画への興味は、映画そのものを楽しむことはもちろんなのですが、監督がどうの、作品がどうの、俳優が、音楽が、ということよりも、どちらかというと、その大本である、どうして写真が動くのか。「映画」はどのようにして生まれて来たのか。もっといえば、「人と映画」「世の中と映画」というように、「映画」というメディアそのものへの興味に向いたのでした。

素直に映画を楽しめばいいものを、物事を斜(はす)に見たり、うまい話には必ず裏があると斜めに構えたりする癖は、このあたりからかも知れません。

ところで今年2015年は、映画が誕生してから120周年を迎えます。

 19世紀末に誕生し、20世紀に完成を見た映画は、21世紀に入るとこの1~2年で、それまでのアナログ記録のフィルム方式から一気にデジタル方式に代わりました。映画の製作現場や配給から上映に至るシステムのすべてがデジタル方式に転換してしまったわけですが、とはいえ、当面、それによって「映画」というメディアの本質が変わる訳ではないでしょう。

デジタル時代は、アナログ時代には考えられなかったCGの出現により、「映画」は芸術・娯楽分野に限らず社会的にもいろいろな分野で極めて広範な活用が見られるようになり、「映像」というより広い概念で語られるようになりました。

今後更なる発展が期待される「映像」分野も、その原点はフィルムが築いてきたものであるということは、決して忘れてはならないと思うのです。




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コメント 21

kemm

新ブログのスタート、おめでとうございます。
映画に疎い私ですがこれからまた楽しませていただきます。
よろしくお願いいたします。
by kemm (2015-01-27 06:32) 

路渡カッパ

私もダンボは観ました、どこで観たかよく憶えていませんが。(^_^ゞ
映画誕生120年ですか・・・考えてみるとこの時代は様々なものが、目まぐるしく猛スピードで発展してきましたね。
by 路渡カッパ (2015-01-27 10:05) 

sig

nonaさん、こんにちは。こちらにもご訪問、ありがとうございます。
by sig (2015-01-27 10:21) 

sig

kemmさん、こんにちは。こちらにもご訪問、ありがとうございます。
再度の掲載ですが、どうぞよろしくお願いします。
by sig (2015-01-27 10:23) 

sig

青山実花さん、こんにちは。こちらにもご訪問、ありがとうございます。

by sig (2015-01-27 10:24) 

sig

路渡カッパさん、こんにちは。こちらにもご訪問、ありがとうございます。
ほんとに、映画史をちょっとかじっただけでも、大きな変転を感じます。
再度ですが、よろしくお付き合いくださいますように。

by sig (2015-01-27 10:26) 

sig

ChinchikoPapaさん
Makimaiさん
     こんばんは。こちらにもご訪問、ありがとうございます。
by sig (2015-01-27 17:39) 

昆野誠吾

先日はお邪魔できず申し訳ありませんでした。
今の子供達、若者達は白黒映像などに馴染みなく、
高い技術のCGなど激烈に綺麗な映像で育っている訳ですが
映像の歴史、どんな所からスタートしたのかを理解できると
様々な楽しみ方ができるようになるんでしょうね^^
by 昆野誠吾 (2015-01-27 18:48) 

青山実花

先日の上映会にお伺いできず、
本当にごめんなさい。
次回、都合がつきましたら、
お伺いしたいと思っています。

それから、新しいブログを作られたのですね。
楽しみにしています。
初めてのカラー映画がディズニーの「ダンボ」だなんて、
なんだか可愛くて、ニコニコしてしまいました^^
これからも宜しくお願い致します。

by 青山実花 (2015-01-27 23:30) 

sig

昆野誠吾さん、こちらにもご訪問、ありがとうございます。
映画誕生についてはいろいろ書かれたりしていますが、このブログでは映画が誕生するまでの「映画前史」に視点を置きたいと思います。あくなき探究心を掻き立てるその根源はどこにあるのか・・・そんなことをできるだけ楽しく画いてみたいと思っております。
by sig (2015-01-28 19:30) 

sig

青山実花さん、こちらにもご訪問、ありがとうございます。
いつも、私とは違う視点からの映画ブログを楽しませていただいております。ディズニー、お好きですか。よろしかったら下記を覗いてみてください。http://fcm.blog.so-net.ne.jp/archive/c45409934-1
by sig (2015-01-28 19:35) 

sig

森田惠子さん
アヨアン・イゴカーさん
sanaさん
(。・ー・。)2kさん
caferamamaさん
masao。さん
       こんばんは。こちらにもご訪問、ありがとうございます。
by sig (2015-01-28 19:39) 

響

ハイビジョンと4Kの例えは
よく判りました。
たしかに今は当たり写真の影って
分かるけどこれに動きと効果音で人を
歓喜させるって素晴らしい。
by (2015-01-28 19:42) 

sig

響さん、こんにちは。こちらにもご訪問、ありがとうございます。
映画は画像と音声で視聴覚の分野ですが、映画史をかじってみて感じたことは、今世紀中には触感・触覚のある映像が誕生するというのが私の見方です。
by sig (2015-01-29 13:32) 

sig

さる1号さん
lequicheさん
      こんにちは。こちらにもご訪問、ありがとうございます。
by sig (2015-01-29 13:33) 

駅員3

ご自身の体験をもとに封を切られたこのシリーズ、今後の展開を考えると、ワクワク、ドキドキしてきます。
by 駅員3 (2015-02-04 09:00) 

sig

月夜のうずのしゅげさん
kurakichiさん
          こんばんは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-06 00:48) 

sig

駅員3さん、こんばんは。
映画が誕生したあとのことはビデオでご覧いただきましたが、ここではそれ以前のいわば「映画前史」を進めたいと思っております。よろしくご支援くださいますように。
by sig (2015-02-06 00:50) 

sig

SILENTさん
(た)さん
          こんばんは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-06 00:51) 

sig

ゆうのすけさん
般若坊さん
YUTAじいさん
            こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-11 15:25) 

sig

ともちんさん、こんばんは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-19 02:19) 

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