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033 映画誕生。例えればディズニーランドのライド体験 [映画の誕生]

033 こうしてシネマ・スペクタクルは誕生した。
    映画誕生 「シネマトグラフ」初公開-1
      
1895 シネマト ポスター2.JPG

 今回は、いよいよ映画誕生の瞬間です。
 
時は1895年(M28)12月28日、暮れも押し迫ったサタデーナイト。ところはパリ。キャピュシーヌ大通り14番地。オペラ座近くにある「グラン・カフェ」。その地下サロン「インドの間」が、歴史に名を残す舞台となりました。
 リュミエール兄弟の「シネマトグラフ」
初公開に集まった人たちの中から、有名な映画関係者が生まれることになります。この会場は確実に、産声を上げたばかりの新しいメディアをはぐくむ揺籃の役目を果たしたのです。

19c末.JPG
●19世末 パリ、キャピュシーヌ大通りの様子

●初公開に揃った、そうそうたる顔ぶれ。
 初公開イベントを企画したのは、リュミエール兄弟の父、アントワーヌでした。彼は知人を介してカフェの持ち主に「入場料は一人1フランとして、フロアの借り賃は入場料収入の2割でどうでしょう」と持ちかけました。
 相手は「今さら幻灯なんて、ネコでさえそっぽを向きますよ」と言い、即座に自分が損をしない金額をはじき出しました。「1日30フラン。どうです? 妥当でしょう? いやならいいですよ」。


lumieres2.JPG●オーギュストとルイのリュミエール兄弟

 さて、初日の夕方。高らかな呼び込みの声にもかかわらず、集まった観客は招待客をまじえて35人。カフェの持ち主は、自分の読みがぴったり当たったことに満足でした。
 ところが数は少なくても、その中身が濃かったのです。

グランカフェ インドの間.png
●インドの間における世界初・映画上映会の様子(ただしこれは再現写真かも)

 観客の中にはまず、エミール・レイノウの「光の劇場(テアトル・オブティーク)」を常打ちにしているグレヴァン博物館(蝋人形館)の館長。パリ屈指のナイトクラブ「フォリー・ヴェルジェール」の支配人といった人たち。
 それから、「シネマトグラフ」を見て4日後に「イゾラトグラフ」という映写機を作り上げてしまうイゾラ兄弟といった、機械自体に興味を持って訪れた人たち。

 次に、シャルル・パテ、レオン・ゴーモンといった興行師たち。この二人は間もなく映画製作を開始し、現在のフランス映画界を二分するパテ社とゴーモン社の創設者となる人たちです。
 それから、自分のステージでぜひ映像マジックを使ってみようと思い立ったマジシャンたち。
 「ロベール・ウーダン劇場」の支配人兼作家兼演出家兼主演俳優のジョルジュ・メリエスもリュミエール兄弟との友人ということで招待されていましたので、同劇場の花形スターで愛人でもあるジュアンヌ嬢(よくある話)といっしょに真っ先に駆けつけておりました。

IMGP7901-2.JPG  ジュアンヌ・ダルシー.JPG
●ジョルジュ・メリエス     ●ジュアンヌ・ダルシー

●これが映像マジックの第一歩。
 会場の一隅にスクリーンの白布が張られ、反対側に「シネマトグラフ」の映写機が、手回し上映でガタつかないようにがっちりとした高い木組みの台に固定されています。
 観客に手渡されたプログラムには12本の作品が列記され、簡単な説明が付いていました。長さはすべて17メートル(50フィート)の1巻物ばかり。どれも時間にして1分足らずの作品です。映写技師は一定スピードでハンドルを回し続けることが出来るプロフェッショナルです。

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●「シネマトグラフ」と映写技師    ●世界初の映画とされる「工場の出口」

 リュミエール兄弟は謙虚な人たちでしたから、アメリカの大発明家とちがって「シネマトグラフ」を世紀の大発明などと吹聴することはありませんでした。簡単な挨拶のあと早速上映となりました。ジュアンヌ嬢とドキドキしながらスクリーンに見入ったメリエスは、あとでこう語っています。

 「正直言ってがっかりしました。スクリーンに映し出されたものは、私が自分の劇場でマジックの最後に見せている幻灯と何ら変わらなかったのです。先日リュミエール氏に会った時、彼は私に度肝を抜くようなものを見せて上げるというので期待して出かけてきたものを。つまらん。
 そう思ったとたん、なんと、スクリーンに映る工場の出口から、大勢の人たちが一斉にこちらに向かってゾロゾロと近寄ってくるではありませんか。これには本当に度肝を抜かれてしまいました。リュミエール氏の言ったことは嘘ではなかったのです」


 もうお分かりのように、リュミエール兄弟は初公開で最初の上映フィルムとなる「リュミエール工場の出口」の上映に際して、いきなり動かさずに、わざと静止画で見せておいたのですね。
 生まれて初めて映画を見る人たちは、始めから動く写真を見せられただけでびっくりすると思いますが、静止画と思っていたら突然動き出した、というリュミエールの演出の方が数段効果的だったと思うのですが、いかがでしょう。
 この例からもリュミエール兄弟は、映画を撮る時に何らかの演出を考えて撮影に臨んでいたことが伺えます。

●映画は最初から演出されていた。
  当日公開された「映画」は12作品ですが、その中から「リュミエールといえば、これ」と挙げられる有名な6作品を動画でご覧いただきます。動画は2作品ごとに3箇所に挿入してあります。
 これらのフィルムはすべて関係者の協力で作られたもので、決して見たものをそのまま思いつきで撮影したものではありませんでした。

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「工場の出口」……………画面は中央で真半分に分けられ、室外と室内の明暗が対比されています。リュミエール工場の出口から繰り出してくる社員たちが画面の左右に分かれるように演出されています。動きには犬も加わり、自転車、馬車の登場と次第にスケールアップします。映画史に残る誇り高き出演者たちです。
「工場の出口」には同じシチュエーションで3本のバージョンがあり、そのこと自体、演出が行われたことを物語っています。

IMGP7938.JPGIMGP7908.JPG列車の到着.jpgIMGP7965.JPG
「列車の到着」……………リュミエール兄弟の父の別荘の近く、ラ・シオタ駅のホームに、リュミエール一族を総動員して撮影されたもので、工場の従業員たちもエキストラで駆り出されているのではないでしょうか。
ロングショット(遠景、全景)に始まった情景が、カメラはまったく動かないのに、次第に視野がミディアム(中景)、アップ(近景)と1カットの中で大きく変化します。
こういった映画表現の概念はまだ生まれていなかったのですが、「列車の到着」には、舞台では見られない画面のパースペクティブ(遠近感)を生かした、映画表現ならではの特徴がすでに芽生えていると見ることができます。

●動画「工場の出口」「列車の到着」


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「赤ちゃんの昼食」………兄のオーギュスト、奥さんのマルグリッド、娘のアンドレの食事風景。日常的なホームムービーに見えるこのような画面にも、撮影し易いように3人が横並びという演出が施されています。また3人がカメラを見ることはありません。その点が「カメラに向かってニッコリ」のホームムービーとちがうところです。

IMGP7912.JPG
「水を撒かれた散水夫」…1分弱という時間の制約を逆手にとって、完全な演出による見事なコメディに仕上がった作品です。コントや瞬間芸の世界ですね。
散水夫はいたずら坊やを追いかけて行っても画面から外れることはなく、わざわざカメラの前に戻ってきてからお仕置きを始めます。

●動画「赤ちゃんの昼食」「水を撒かれた散水夫」


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「港を出る船」……………自分が海中に放り出されたような不安感で、観客が思わず脚を上げて動揺したという作品です。女性を立たせ、風でスカートがひるがえるのを見せる演出も、なかなかのものです。

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「エカルテ遊び」…………
リュミエール兄弟の仲間によるカルタ遊びのコメディです。給仕役のコミカルなアクションは、まさに演技そのものです。

●動画「港を出る船」「エカルテ遊び」

●始めて映画に接した人々の驚き。
 
映画は奥行きのある三次元の情景を撮影し、スクリーンという二次元の平面に映し出すものです。その質感の違いによる違和感をどこかで覚えながら、観客は会場に張られた白布を食い入るように見つめていました。

 「列車の到着」では、ばく進してくる機関車の威圧感に恐れをなして、叫びを上げて思わず浮き足立ったり、通り過ぎた機関車がどこに消えたのかと、スクリーンの裏を覗く人もいたそうです。「水を撒かれた散水夫」では、ホースの水が自分に降りかかるのを避けようとして頭を動かしたり、画面に海水が満ち溢れている「港を出る船」が始まると、無意識のうちに両足を浮かせてしまったという人もいて、会場はさながらテーマパークに迷い込んだ子供たちのように、やんやの大賑わいになりました。

 これらのエピソードは、あとで多少話に尾ひれが付いたかも知れません。それにしても生まれて初めてスクリーンで動き回るほぼ等身大の人物をみた驚き、そして実際の風景の中に自分が立っているような迫真的な臨場感。そのスペクタクルから呼び起こされた感動は、現在の私たちには想像もつかないくらいショッキングなものだったのではないでしょうか。 

 なお、「シネマトグラフ」に撮られた人たち(身内や社員)がどのような機会にこれらのフィルムを見たかはどこにも書かれていないのですが、ほぼ等身大で動く自分の〈分身〉を、どんな気持ちで観たことでしょう。   

                                                   つづく

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路渡カッパ

これはもう動く写真ではなく、三次元の情景を映し出した映画、エポックだったのでしょうね!
当時の観客のリアクションが目に浮かぶようです。
現代人が初めて3D映像を見た時より凄いことだったでしょうね。(^_^ゞ
by 路渡カッパ (2015-04-25 10:32) 

響

素直に2割で手を打てばよかったのに。
ガッカリさせてびっくりさせるなんて憎い演出だ。
by (2015-04-25 12:22) 

sig

路渡カッパさん、こんにちは。
「列車の到着」では、スクリーンの左へ切れた機関車はどこに消えたのかと、スクリーンの裏を覗いてみる客もあったとか。現代でこれほどインパクトのある体験をしてみたいものですね。現代人は災害へのこころがけなどもあり、何があっても驚かないという感覚が育ってしまって、ビックリしなくなりましたからね。感覚的には完全に退化現象ですね。笑
by sig (2015-04-25 12:41) 

sig

響さん、こんにちは。
興行で売り上げの2割というのは結構いい率ですよね。会場の主はよほど客が来ないと踏んだわけですね。こういう話があった時には状況の分析力が必要とそれますね。その点、上映時の演出力をみてもリュミエール兄弟の方が一枚上手のような気がしますね。
by sig (2015-04-25 12:59) 

Aちゃん

最近、タイムラプス動画が流行ってますね。
写真を繋いで動画のように見せる手法です。
見てると面白いけど、何か原点に戻った感じがするね(^^;
by Aちゃん (2015-04-26 00:07) 

ゆうのすけ

sigさ~ん 1000記事&2にゃんず20回目の誕生日 お祝いコメントを一番でいただき有難うございます。^^
これからもどうぞ宜しくお願い申し上げます。✿
素敵な日曜日になりますように~!☆^^
by ゆうのすけ (2015-04-26 00:42) 

yakko

お早うございます。
映画誕生の瞬間をありがとうございます(_ _)
今 私たちが映画を楽しめる歴史を知ることが出来ました !
by yakko (2015-04-26 06:16) 

sig

Aちゃんさん、こんばんは。
タイムラプス動画は、そのぎくしゃくした動きが、生まれたばかりの手回し映画に通じるところがありますね。
技術的には撮影がアナログで行われるのかディジタルなのかの違いだけで、タイムラプス動画も映画のコマ落とし技法と本質は同じものなんでしょうね。
by sig (2015-04-26 19:27) 

sig

ゆうのすけさん、こんばんは。
今日は古い友人と同伴同士で会いまして、ごちそうになりました。
とても楽しい日曜日でしたよ。ありがとうございました。
by sig (2015-04-26 19:30) 

sig

YAKKOさん、こんばんは。
私のライフワークの映画前史。そのハイライトが映画誕生と言うわけですが、お言葉ありがとうございます。この辺で間もなく中間地点といったところです。まだしばらく続きますのでお付き合いいただけると嬉しいです。
by sig (2015-04-26 19:34) 

replica montres cartier

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by replica montres cartier (2015-11-12 19:16) 

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