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005 青空にそびえ立つ大入道 [太古、人は影に気づいた]

005 青空にそびえ立つ大入道
   残像現象とレンズ効果の気づき

大入道.jpgP1070133.JPG

  前回は、ヒトが「映像」に関する基本的なファクター(要素)にいつ頃から気がついたのかを考え、「太古、人は「影」に気づいた」という内容でした。今回はその続きです。

 
 今日あたりもしかして、北海道、東北、北陸地方は雪空かもしれません。それとは全く正反対に、関東地方はどこまでも澄み渡った雲ひとつない青空。これがいわゆる西高東低の冬型気圧配置。今頃のお天気の特徴と言われております。

 
そんな青空が広がっているある日…それは冬でも夏でもいいのですが、子供の頃、広場に立って、瞬きをしないでしばらくジッと白い土の上の自分の影を見つめてからパッと空を見上げると、青空に白っぽい大入道の姿が…。こんな遊びをした経験がおありかと思います。
  ご承知のようにそれは、眼球の奥の網膜に映った自分の影が、真っ青な背景に投影される「残像」と呼ばれる現象です。

P1060338b-2.JPG

 
そしてもうひとつのファクターは、例えば雨上がりの木の葉や草の葉先にこぼれ落ちそうになっている水滴…。その美しさに誘われて思わず覗き込んだとき、そこに映りこんでいる景色。そしてその景色が実際とは逆になって見えることの不思議…。これは一種のレンズであるわけですが、ヒトがこれらの自然現象に気づいたのは、いつの頃からなのでしょうか。

 「影」と「残像」と「レンズ」・・・この映画の基本となる3つの現象は、おそらく自然と接する日常生活の中で太古から知られていたはずです。
「影」は「画像」に置き換えることができると思います。「画像を動かして拡大して見せる」、つまりこれこそが映画なのですが、では、この3つをうまく組み合わせれば映画ができるかといえば、そう簡単なものではありません。

 
まず「画像」はどのようにして取り込むのか。取り込んだ画像は何にどのように定着させるのか。つまり記録の方法(「メディア」)です。さらにはそれを動かすための「仕掛け(「機構」)」はどうするのか。それは残像現象を応用すれば何とかなりそうですが、動かすためには「動力」が必要になるでしょう。次に、壁面に大きく写すためには「光源」が必要ですが、その仕組みの中で「レンズ」が役立ちそうです。
 
ただし、それは今だから言えることであって、大昔はそれぞれの現象は別々に意識されていただけで、決して結びつくことはありませんでした。

古文書image.jpg●古文書イメージ

 
 文献によれば…、そう、すべて物事は記録として残されて始めて歴史を刻み始めるのですが、…「影」の発見、これについては記述はありません。当たり前(笑)。
「残像」の発見については、紀元130年ころのローマ時代にルクレティウスやプトレマイオスによる残像の実験の記述があるようです。

  本格的なところではアラビアの数学者アル・ハーゼンによる残像現象の実験です。彼は何色もの色を塗り分けたコマを回して、回転スピードが変化すると色彩がどう変わるかとか、残像現象は何秒くらい続くかというようなことを実験したとされています。紀元1000年前後の話です。

 
こうした自然現象に対する人間の知覚というものが意識され始めると、いろいろな発明や発見に結びついてくることになります。たいていはおもちゃのようなものから発展していくのですが、残像現象もその不思議さが子供たちにアピールして、いろいろな彩りのコマのおもちゃが作られたようです。

 
 
また、最初にお話した青空の大入道は、実はネガ像と言うことができます。フィルムカメラで撮影されたネガフィルムを思い出していただくと分かりやすいと思いますが、カラーフィルムのネガとポジの色合いは「補色関係」にあります。

 それを応用したものに、
顔が赤くて髪が緑色の魔女の絵がありました。この魔女の絵の中央に両目を凝らし、瞬きをしないようにがまんしてじっと見つめた後、白い壁に素早く目を移すと、その瞬間、顔は緑、髪は真っ赤な魔女に変身します。赤と緑は補色関係にあるからですね。
 このように、ポジ(陽画)とネガ(陰画)の関係も、実は大昔に発見されていたようです。

 
 それではここで一枚の写真をご覧いただきましょう。
このネガは女性の顔のようですが、さて、誰でしょうか。
 
先ほどの魔女の例と同じ要領で、眼と眼の間あたりに両目を凝らして20秒ほどじっと見つめた後、その下の白いスペースに素早く目を移してください。残像はすぐに消えるように見えても、見つめ続けているとかなり長い時間残っているものです。それは、室内から窓枠などを通して屋外を見つめた後に目を閉じただけでも同じことです。

P1050114-2.JPG★私は誰でしょう?(答は次回に)
白バック.jpg

 
 一方、レンズについて調べてみますと、語源はその形からラテン語の「豆」という意味だそうですが、もちろんその前にガラスを作る技術が無ければならず、それは紀元前16世紀後半にメソポタミアあたりで発祥し、エジプト、ギリシャ、フェニキアの時代を経てローマ帝国へと伝わりました。紀元前2000~1500年頃のことで、最初は主に装飾品として用いられていたということです。 

 
 中世に入ると教会のステンドグラスなどに使われるようになり、ガラス加工技術は進むのですが、光を収束させたり物を拡大したりする、いわゆる今で言うレンズとしての実用化は、12世紀後半の拡大鏡や眼鏡の発明以降とされています。従って残像現象の発見からレンズの実用に至るまでだけでも、ほぼ1000年の開きがあるということになります。

Hugh de Provence の肖像画の部分。Tomaso da Modena 作(1352年).jpg枢機卿 Hugh de Provenceの肖像(部分)1352 Wikipedia

 
  さて、このあたりまでは大昔の話で、映画の歴史を語り始める前提となる「動画」にすらまだ届いていません。次回あたりからようやく映画史以前の「映画前史」に入っていくことになります。
今回は空白でページを稼いでしまいました(笑)。










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コメント 37

hatumi30331

私は・・・・・誰かな?
気になる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜^^:

少し、寒さが和らいだような?
早く春になて欲しいね^^
by hatumi30331 (2015-02-10 23:49) 

くまら

レンズの語源が豆とは知らなかったです
by くまら (2015-02-11 00:00) 

kemm

影と残像とレンズ・・随分昔からすでに考えられていたのですね。
BSでモノクロ時代の映画を時々見せてもらっていますが・・
長い歴史から見るとすべて現代のものですね(笑)。
by kemm (2015-02-11 06:01) 

yakko

お早うございます。
水滴に映る景色、大好きです。でも中々撮れません(__;)
by yakko (2015-02-11 09:37) 

路渡カッパ

こんにちは。
そんな古くから残像現象の発見、研究がされていたのですね。
コマからではまだ映像には遠いように思いますが、やはりパラパラ動画あたりが直接的に?・・・今後の展開が楽しみです♪
「私は誰?」何とか残像を見ることができましたが、
外国の女優さんぽいとしか・・・(^_^ゞ
by 路渡カッパ (2015-02-11 11:15) 

sig

mwainfoさん
(た)さん
青山実花さん
まっつんさん
            こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-11 13:41) 

sig

hatsumi30331さん、こんにちは。
彼女の正体は次回に・・・。2~3月は三寒四温で、春にはまだまだですね。
by sig (2015-02-11 13:43) 

sig

くまらさん、こんにちは。
洋食料理にレンズ豆と呼ぶ豆があしらわれることがありますね。レンズ豆が先か、レンズが先か。レンズ豆が先にあって、あとからそれに似たガラスと言うことでレンズと言う名を付けたのでしょうね、きっと。
by sig (2015-02-11 13:46) 

sig

lequicheさん
Cyuまことさん
Caverunaさん
kurakichiさん
           こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-11 13:48) 

sig

kemmさん、こんにちは。
昔の映画、お好きですか。映画が誕生して今年12月で120周年になるのですが、戦後に私が初めて接した時は、まだ60年ほどしか経っていなかったのでした。が、それまでの進化の速さに比べたら、現代は進歩の度合いが遅いと感じております。
by sig (2015-02-11 13:55) 

sig

yakkoさん、こんにちは。
水滴写真は以前に撮った中から探し出したものです。この記事用に撮ったものではないので、水玉が小さすぎます。
by sig (2015-02-11 13:57) 

sig

YUTAじいさん、こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-11 13:58) 

sig

路渡カッパさん、こんにちは。
そのうちぱらぱらマンガも出てきますが、かなり後ですね。
ネガ写真で遊んでくださってありがとう。私の場合は20秒見つめた後に白い画面に目を移したとたん、ほんの瞬間にかなりくっきりした写真に見えた後、輪郭がややぼけた形でしばらく残っています。
by sig (2015-02-11 14:02) 

sig

makmakiさん、こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-11 14:02) 

yuzuhane

おっしゃるとおりにやってみたら残像が見えました。
by yuzuhane (2015-02-11 19:18) 

SORI

sigさん おはようございます。
小さいころ朝日を長く見ていて、残像現象があったことを覚えています。驚きましたが1時間くらいで治りました。それ以来、気をつけております。
by SORI (2015-02-12 08:26) 

YUTAじい

おはようございます。
沢山のコメントありがとうございます。

by YUTAじい (2015-02-12 08:41) 

美美

何も考えずに写真を撮っていますが
いろいろと昔から考えられていたんですね^^;
by 美美 (2015-02-12 18:54) 

ニッキー

残像現象の発見からレンズの実用まで1000年(@_@;)
本当に長い歴史ですねぇ(^.^)
by ニッキー (2015-02-12 21:54) 

うさ

残像実験…。白い紙に目を移したらパソコンの画面にゴミがついているなぁ…なんて気が散ってしまって見えませんでした。失敗ですね^^; 寝る前に目を閉じると様々な光が万華鏡のように入れ替わり立ちかわり見えているのも残像なんでしょうね。
by うさ (2015-02-13 01:18) 

すーさん

ホントホント!レンズの語源が
豆とはビックリです(=´∀`)人(´∀`=)!。
by すーさん (2015-02-13 07:40) 

sig

hitominさん
ChinchikoPapaさん
ネオ・アッキーさん
nonaさん
(。・・。)2kさん
        こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-13 09:38) 

sig

yuzuhaneさん、こんにちは。
ありがとうございます。その人は誰かは次回(明日の午前0時)に。
by sig (2015-02-13 09:40) 

sig

SORIさん、こんにちは。
無邪気に見つめていたのでしょうね。失明に至らなくてよかったです。
この例ではそんな危険はありませんからどうぞご安心を。
by sig (2015-02-13 09:41) 

sig

YUTAじいさん、再度のご訪問、ありがとうございます。
by sig (2015-02-13 09:55) 

sig

koh925さん
nikiさん
二郎三郎さん
masao。さん
こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-13 09:58) 

sig

美美さん、こんにちは。
美美さんの写真はほんとにすばらしいです。いつも感心しております。
こんな理屈はどうでもいいのですよ。笑
by sig (2015-02-13 09:59) 

sig

mayuさん
八犬伝さん
パパ太郎さん
こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-13 10:00) 

sig

ニッキーさん、こんにちは。
昔の1000年は現在の100年かもしれませんね。
by sig (2015-02-13 10:03) 

sig

昆野誠吾さん
Ujiki_Ooさん
唐津っ子さん
こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-13 10:04) 

sig

うささん、こんにちは。
うささんらしくて笑っちゃいました。瞼を閉じるとあらわれるいろいろな模様?を見つめる?のは、楽しいですね。
by sig (2015-02-13 10:06) 

sig

シルフさん、こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-13 10:07) 

sig

すーさん、こんにちは。
ラストの枢機卿の架けているメガネは、まさに 豆 ですね。
by sig (2015-02-13 10:08) 

sig

月夜のうずのしゅげさん
森田惠子さん
SILENTさん
こんばんは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-13 21:47) 

sig

さる1号さん
ちょいのりさん
こんにちは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-15 09:47) 

sig

キューさん
アヨアン・イゴカーさん
himakkoさん
よーちゃん
こんばんは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-17 00:16) 

sig

ともちんさん、こんばんは。ご訪問ありがとうございます。
by sig (2015-02-19 02:23) 

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